"First Principles in Scrum” webinar series: Chapter 1「アジャイルテクノロジースタックと生物学の関連性とは」
2024.11.14
2023.08.17
1993年、ジェフ・サザーランド博士がEasel社のプロダクトチームで、最初のスプリントを実施してから、30年が経ちました。その間、スクラムは、世界中に広がり、今日の私たちの世界の発展に大きな貢献を果たしました。
私たち、Scrum Inc. Japanは、この30周年という節目を祝うため、5月に放映された30周年記念ウェビナー「1度きりのスプリントから大きな変革へ」に日本語字幕をつけるとともに、新たに、日本のスクラム実践者に向け、ジェフ・サザーランド博士とScrum Inc. Japanのクロエ・オニールの特別対談を収録しました。
ウェビナーと特別対談では、これまであまり語られることがなかった、Easel社におけるスクラム生誕のエピソードから、スクラムのシークレットソース、海外の行政府におけるスクラムの取り組み、アメリカのアジャイル変革の現状、AIとスクラム、など、幅広いトピックがジェフ・サザーランド博士、Scrum Inc.グローバルのJJ・サザーランドCEOによって語られます。
中でも、私たちスクラム実践者にとって、最も知りたいのは、スクラムのシークレットソースでしょう。
このブログを読んでいる皆さんは、スクラムを実践することによって、チームのポテンシャルや創造性が解き放たれる魔法のような瞬間を経験したことがきっとあると思います。
ではなぜ、スクラムは、私たちが持っているポテンシャルや創造性を引き出し、チームとチームが生み出すプロダクトを別の次元へと引き上げることができるのでしょうか?
ウェビナーと対談の中で、ジェフ・サザーランド博士は、スクラムのシークレットソースをカオス理論によって解説しています。カオス理論とは、天候や生態系は、安定性と不安定性の境界(カオスの縁)にあるとき、微小な変化によって、大規模な変化や進化を起こすとする考え方です。
ジェフ・サザーランド博士は、スクラムチームのメンバーがシステムをメタ認知できたときに、チームはカオスの縁に存在することになり、継続的改善を通じて、チームの急激な進化が起きると説明します。そして、スクラムチームが自身のシステムをメタ認知するためには、スクラムマスターがリーダーシップを発揮し、高い心理的安全性のもとに対話が促進され、チームの仕事の状態はもちろん、チームメンバーの考えや思いも可視化されていることが前提となります。
真にオープンな環境をつくり、チームのシステム認知を高め、継続的改善を通じて、チームを進化させる。これが、スクラムが引き起こす魔法の正体なのです。
一方、ジェフ・サザーランド博士は、ウェビナーのなかで、経営者にとって大事なのは結果であり、スクラムの価値基準や幸福度には興味がないという、私たちスクラム実践者にとっては、不都合な真実についても言及しています。しかし、そのような状況でも、スクラム実践者は、経営者に小さな実験を提案し、成果をあげれば、スクラムを組織の中で拡大することができると、ジェフ・サザーランド博士とJJ・サザーランドは私たちを励まします。
経営層の理解が得られないことは、多くの日本のスクラム実践者にとっても、共通の悩みだと思います。
しかし、よく考えてみれば、30年前、まだ、スクラムやアジャイルという言葉もなく、日本の製造業との競争に破れ、国全体が未だ停滞ムードにあったアメリカにおいて、スクラム実践のハードルは、今の日本以上に高かったのではないでしょうか?しかし、ジェフ・サザーランド博士とスクラムのコミュニティは、スクラムの実験を一つまた一つと成功させ、遂にはアメリカ社会に革命をもたらし、今日のアジャイルムーブメントを築きました。
対談のなかで、ジェフ・サザーランド博士は、「協調性に溢れる日本人こそ、より高いレベルでスクラムを実践できるはずだ。日本人よ、スクラムによるイノベーションでもう一度、経済的な発展を成し遂げてほしい」と、温かくも厳しいメッセージを投げかけてくれています。
確かに30年前のアメリカと同じように、私たちの日本経済は厳しい状況にあり、多くの日本企業の経営層はスクラムにはまだ興味がありません。しかし、私たちには、スクラムを実践する多くの仲間がいます。
ぜひ、ウェビナーと対談をご覧ください。そして、スクラムによる真の変革に向け、思いを新たに、共に日々のスプリントに取り組んでいきましょう。
(和田 圭介)
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