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Scrum Interaction 2023開催レポート

2024.01.05

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

Scrum Inc.では、昨年、12月7日、「両利きの経営とScrum@Scale」をテーマにScrum Interaction 2023を開催しました。

参加後、より理解を深めたい方や参加できなかった方を対象に事後レポートをお送りします。

セッション1:今こそ、本当の「両利きの経営」を語ろう

セッション1では、両利きの経営の提唱者、タッシュマン、オライリー両教授の日本における共同研究者、加藤 雅則氏とScrum Inc.の内山 遼子の2人が、両利きの経営の本質と実践のポイントについて、対談。

加藤氏によれば、両利きの経営の最新の定義は、「既存の経営資源や組織能力を再活用して、新しい成長領域を見出す経営理論」。

つまり、企業の戦略事業がコア事業の資産を「再活用」し、成長戦略を実現していくための経営理論なのだ。そして、戦略事業における新たな学びを、コア事業へ還元し、「磨き上げる」ことで企業は持続的な成長を実現する。

現在、新規事業や既存事業のDX化といった戦略的な取り組みを、コア事業と切り離して、「出島」で実行する日本企業は多い。しかし、戦略事業の着想(Ideation)、育成(Incubation)のフェーズでは、「出島」でも問題ないが、量産化(Scaling)のフェーズでは、必ず自社の既存の強みが必要となる。

戦略事業の量産化を通じて、成長戦略を実現するためには、戦略事業を「出島」として、切り離すのではなく、コア事業と戦略事業が同じ屋根(目的やビジョン)の下にいるという意識が大事。

一方、コア事業と戦略事業では、求められる行動原理が異なる。コア事業では「効率性・リスク回避」、戦略事業では「検証・挑戦」が求められるため、それぞれの行動原理に合わせて別々の組織運営モデルを適用とすることが重要となる。また、異なる組織運営モデルを適用するコア事業と戦略事業が助け合うためには、戦略事業について、会社として、自分たちはここで勝負するのだという、全社的な合意が不可欠となる。

そして、全社的な合意(戦略的な抱負)のもと、戦略事業とコア事業が、異なる組織運営モデルを取りながらも、協力し合えるしくみづくりが両利きの経営実践のポイントとなる。両利きの経営を企業に再現性のある形で導入する手法の一つとして、Scrum Inc.が提唱するScrum@Scaleは非常に相性が良い。スクラムやScrum@Scaleは、組織の活動に焦点をあてており、両利きの経営に欠かせない、リーダーシップやチームの協力のための継続的な交流を生み出すことができる。

セッション2:両利きの経営、実践者たちのリアル

続くセッション2では、LIXILのマーケティング部門を率いる安井卓氏とKDDIの法人部門におけるサービス企画部門を率いる梶川真宏氏を招き、Scrum Inc.の和田圭介も参加して、Scrum@Scaleによる両利きの経営の実践事例として、2社の取り組みを紹介した。

安井氏によると、同社がスクラムおよびScrum@Scaleを導入した背景には、国内外の建材・設備機器メーカーの統合により誕生したLIXILにおいて、統合のシナジーを最大化する新たな組織文化が必要性があった。また、日本国内の新設住宅着工戸数が減り続ける中、同社のビジネスがこれまでの新築依存からリフォームへシフトする必要があり、ハウスメーカーやデベロッパー向けのBtoBマーケティングから消費者向けのBtoCマーケティングの会社へと大きく生まれ変わる必要があった。そして、企業の文化を変えながら、新たなビジネスモデルへシフトしていく具体的な組織変革の手法として同社が選択したのが、スクラムおよびScrum@Scaleだったのだ。LIXILでは、既にデジタル部門全体でスクラムおよびScrum@Scaleが活用されており、安井氏が率いるMarketihig部門でもその導入が進む。

一方、KDDIの梶川氏によれば、KDDIでは約10年前からチームレベルのスクラムを日本企業において先駆けて実践してきたが、同社の戦略事業であるDX事業を通じた成長戦略の実現には、チームと経営層が一体となる新たなアジャイルな組織運営モデルが必要だった。そこで、同社では、Scrum@ScaleのPOサイクルを、「対話型事業育成モデル(KDDIモデル)」と名付け、リーダーシップのチームが、スクラムチームやCPO(チーフ・プロダクトオーナー )に助言とリソースを提供しながら、市場・顧客からの学びをもとに事業を育成していく取り組みを始めた。

KDDIでは、最終的には、KDDI社内のリーダーシップとチームの対話を超え、KDDIと顧客、社会全体がそれぞれの思いを実現する社会の実現を目指しており、そのビジョンの実現の手段として、同社の戦略事業におけるScrum@Scaleによるアジャイル組織運営の拡大を目指す。

2社の取り組みに対し、視聴者から、経営層やメンバーの巻き込みを中心に多数の問い合わせが寄せられた。

メンバーの巻き込み方法について、経営層として、Scrum@Scaleを推進する安井氏は、自身の業務時間の多くをメンバーとの1on1に費やしていることを明かし、「徹底的な対話」が最も効果的であると話した。

経営層の巻き込み方法について、ミドルマネージャーとして、経営層の巻き込みを進める梶川氏からは、対話を通じて、経営層と変革のゴールを議論、同意する重要性と、アジャイルやスクラムに関するアレルギーをなくすために、あえて、スクラムやScrum@Scaleの用語をKDDIの社内用語に置き換えるといった工夫が視聴者に共有された。

また、セッション2に登壇いただいたLIXIL、KDDIの取り組みの詳細は、今後、NewsPicksにて事例記事が掲載される予定となっている。

ぜひ今後の事例記事も楽しみにしていただきたい。