"First Principles in Scrum” webinar series: Chapter 1「アジャイルテクノロジースタックと生物学の関連性とは」
2024.11.14
2024.08.28
Scrum Inc. 認定資格スクラムマスター研修をお届けしている中で、受講者の方から「スクラムの各役割を兼任してよいでしょうか?」という質問を多くいただきます。
今回は、スクラムの役割の兼任について書いてみたいと思います。
スクラムを実践する上では、スクラムガイドを元に自分自身で考えていく必要がありますが、その中でも「これでいいのだろうか、合っているのだろうか?」と悩みながら実践している人がほとんどかと思います。このブログが、少しでも読まれた方の道標になり自信を持って実践ができるような助けになれたら嬉しいです。
本題に入る前に、まずはスクラムの役割についておさらいしてみましょう。
スクラムにはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者の3つの役割があります。
この3つの役割はそれぞれ以下のような責任を持っています。
顧客に届けるプロダクトの価値を最⼤化することに責任を持ちます。プロダクトビジョンを設定してステークホルダーやチームの方向性を揃え、ビジョンに至るプロダクトゴールを定めます。そして、このプロダクトゴールを達成するためにプロダクトバックログを整理し優先順位を付け、チームに示します。
なお、スクラムガイドには「プロダクトオーナーは 1 ⼈の⼈間であり、委員会ではない」という注意書きがあります。例えばプロダクトオーナーが複数人いることで、人によって違う優先順位を示すなど、チームに混乱を生じさせないためのルールです。
スクラムチームと組織にスクラムを定着・確立させてチームのゴールを達成させることに責任を持ちます。そして、彼らがスクラムのフレームワークを通じ、自分たちのプロセスを改善できるように支援します。
スクラムマスターは、奉仕(サーバント)型のリーダーシップです。スクラムチームが自律的に考え、行動できるよう、チームメンバーを導きます。また、プロダクトオーナーの仕事内容を理解してコーチしたり、組織へのスクラム定着の支援をする役割も果たしたりします。
その他にも、チームや組織の障害物を見つけ出し、解決するまで追跡・除去を行う責任もあります。
スプリント内で具体的な作業をし、プロダクトオーナーが定めた”顧客に届けるインクリメント”を作成する役割で、スプリントの主役です。スプリントの計画を作り、日々の状況を確認し、スプリントゴールの達成に向け自分たちで計画を適応させていきます。
プロダクトオーナーは、スクラムチームに対し、何をすべきか(What)とそれはなぜか(Why)をプロダクトバックログなどで示す責任を持っていますが、開発者はそれをどのように実現するか(How)に責任を持っています。
また開発者は、リードタイムを短くしプロセス効率を高め、価値を早く顧客へ届けるためや、プロダクトバックログを高い品質で形にするために、様々なスキルを持つ必要があります。
それでは、本題であるスクラムの役割の兼任について、いくつかのパターンをみてみましょう。
様々な要因はありますが、この2つの役割を兼任しているという話しをよく聞きます。例えばメンバーが揃えられないなどでメンバーが少ないチームや権限を手放せない、あるいは優秀な人が全てを担当することになっているなどがあります。しかし、プロダクトオーナーとスクラムマスターでは、それぞれの役割が目指す目的が異なるため、この2つの役割の兼任は避けた方がよいです。
このように、スクラムマスターとプロダクトオーナーの兼任は避け、それぞれに専念できる体制を整えることをおすすめします。
スクラムマスターを専任とすることでチームの状況に向き合い、無限にある問題に対し優先順位をつけて一つ一つ解決することでチームの成長を最大限加速させることができますので、スクラムマスターの役割を専任とすることを推奨します。
しかしどうしても必要であればスクラムマスターと開発者の兼任をしてもよいと思います。
スクラムマスターが開発者として仕事をすることで、スクラムチームの開発者の仕事を把握することができ、効果的なプロセス改善を考える上での判断材料にできるというメリットもあります。一方で、開発者の仕事を優先してしまい、スクラムチームの改善や成長を止めてしまう、あるいは、障害物が見つかった時に、いつまでもその障害物が取り除かれなくなるなどのデメリットがあることも認識すべきです。
メリット・デメリットを踏まえた上で判断し、この2つの役割を兼任することになった際には、何も考えずに兼任をするのではなく、以下の点に注意をする必要があります。
スクラムマスターは客観的にチームの状況を把握することで、チームが抱えている問題は何かを洗い出し、チームへ改善を促していきますが、開発者と兼任をしている場合、個人的な利害を優先してしまう可能性があります。
スクラムマスターは中立的な立場であることが求められますので、スクラムマスターとして発言する場合は、公平で客観的な意見をする必要があります。
また、あまり発言を多くしすぎてしまうとチームメンバーはスクラムマスターに頼りきりになってしまい、チームが自己組織化されなくなる可能性もあります。
このようにならないためにも、スクラムマスターが開発者としての意見を表明する場合には、
・一番最後に発言をする
・「これは開発者(またはスクラムマスター)としての意見ですが」と一言添える
などの配慮が必要になります。
スクラムマスターと開発者の兼任と同様に、プロダクトオーナーの役割を専任とすることを推奨しますが、どうしても必要であればプロダクトオーナーと開発者の兼任をしてもよいと思います。
ただ、この場合もいくつか注意が必要です。
スクラムマスターと開発者、あるいはプロダクトオーナーと開発者の兼任については、スクラムガイドの”デイリースクラム”の部分で以下の通り、兼任しても良い旨が述べられています。
プロダクトオーナーまたはスクラムマスターがスプリントバックログのアイテムに積極的に取り組んでいる場合は、開発者として参加する。
しかし、上記で一部述べた以外にも兼任におけるメリット・デメリットは存在します。
以下の点についても合わせて考慮した上で、兼任すべきか、しないべきかを検討してください。
ここまで、スクラムの役割の兼任について、避けるべきことや注意すべきことをお伝えしてきましたが、チームの練度や取り組んでいる仕事の内容など状況によっては、事情が変わります。
役割の兼任に限らず、スクラムを効果的に実践するためには、各役割がどのような責任を持っていて、何をすべきなのかをしっかりと理解することが大切です。役割の相互理解を深め、尊重しあい、助け合うことで、より良いスクラムチームに成長していきます。
執筆:梅澤 友紀
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