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2018.05.18
今回は、平鍋健児がハーバードビジネスレビューの記事について書きます。
米国のHarvard Business Review、May-June 2018版に、スクラムのco-creatorの一人であるJeff Sutherland らが書いた論文が掲載されています。以下から、無料で参照できるので、読んでください。
https://hbr.org/2018/05/agile-at-scale
この日本語版も、日本版ハーバードビジネスレビューの紙面で掲載される予定ですがまだ先なので、ここで内容をかいつまんで紹介しようと思います。
※ 2018/9/11 追記:9月発売の日本語版ハーバードビジネスレビューに掲載されています。(http://www.dhbr.net/articles/-/5518)
まず、この論文は「全社でアジャイルを展開すべきだ」とか「大規模なチームをアジャイルで運営すべきだ」とは言っていない。むしろ逆で、
という点が議論になっています。既存組織をどうするか。例えば、Boschは最初「デュアル組織」というやり方で、既存と新規の2つの部分に会社全体を分けたといいます。しかし、アジャイルチームを本気で多数作る場合、ビジネスの他の部分をまったく「そのまま」にしておくことはできないでしょう。会社の管理的機能(既存組織)とイノベーションチーム(新チーム)間の摩擦は大問題。だから、既存側も少なくとも他のアジャイルチームを邪魔せずサポートするように、アジャイルの価値と原則だけは、浸透させよう。ということです。現在でも、Boschでは既存と新規のハイブリッドだそうです。しかし、アジャイルの価値と原則は理解されている状態だとのこと。
また、もう1つは、社内の「アジャイル推進チーム」もアジャイルにバックログを作って順序立てて行こう、という内容。一度にすべてを変化させる「ビッグバン型」移行はうまくいかないことが多く、課題の「タクソノミー」(分類)とその優先順位を使って、移行を優先度順に行おうと。
Scruminc. がこれまでコンサルティングしたり、調査したりした企業群が実名で取り上げられています。特に、Bosch、Netflix、3M, SAP, ING、USAA(米国の軍事向け金融サービス)、Saabのグリペン戦闘機プロジェクトなどなど、生まれつきアジャイルな会社だけでなく、既存の大企業がアジャイルを取り入れ出した事例がふんだんに含まれていますので、エピソードが面白い。例えば、、、
有名なマルチプレイヤーのオンラインバトルゲーム「League of Legends」を開発するRiot Games社の事例より。人事などの既存管理組織とアジャイルチームのインターフェイスを見直す際の基本的な視点として、それら既存組織の顧客の定義から始めています。
「彼らの顧客は、その組織のボスたちではないし、CEO、あるいは役員でもない。最終の顧客であるゲームプレイヤーたちを楽しませる、【開発チーム】こそが彼らの顧客である。」
間接部門や管理組織は、事業部門や開発チームこそが、彼らの顧客であり、その延長に会社の顧客である「プレーヤー」がいるのだ、という顧客中心主義にはっとしました。これは、間接部門がアジャイルになる、ということよりも「顧客思考になること」であり、アジャイルの原則を受け入れることに近いのでしょう。
など、興味ある話題が盛りだくさんです。海外の企業ならではのものもありましたが、日本でも可能なことがたくさん書かれていました。
ぜひ、読んで見てください!
https://hbr.org/2018/05/agile-at-scale
(ひらなべ @hiranabe)
※2018/9/11追記 :また、この内容のスクラムセミナーが、ついに日本で開催されます!