アジャイル開発を得意とするKDDIアジャイル開発センター。アプリケーション開発の現場を担う二人が、研修を受講した理由や期待していたこと、得られた知識や経験、それをどう業務に活かしたかについて語ります。研修後に起きた自身やチームメンバーのマインドや行動の変化についてインタビューしました。
左:アジャイル開発センター株式会社 開発1部 プロダクトオーナーリード 中島 智弘様
右:同社 開発5部 スクラムマスター 小糸 悠平様
(以下、敬称略)
──お二人の簡単な紹介をお願いします。
中島:2023年にオンライン形式でScrum Inc.認定スクラムマスター研修(以下スクラムマスター研修)とScrum Inc.認定プロダクトオーナー研修(以下プロダクトオーナー研修)の研修を受講しました。アジャイル歴は5年で、現在はKDDIの社員向けアプリの開発を担当し、プロダクトデザインの支援やプロダクトオーナーの支援も行っています。
小糸:私は2021年にスクラムマスター研修、2022年にプロダクトオーナー研修を受講しました。現在はスクラムマスターとしてグループ会社の代理店業務を効率的に行うためのシステム開発を担当しています。また、若い社員の多い会社なので経験の浅いメンバーの支援を行うことも期待されています。
──研修に参加したきっかけと期待していたことについて教えてください。
中島:アジャイル開発を行う企業として本研修が必修であったことと、アジャイルを実践する中で自分の知識に偏りがあると感じていたので、バランスよく学びたいと思い研修に参加しました。実際に開発中のアプリでは、顧客の企画チームに対してプロダクトデザインの支援をしているので、その経験をもっと深めたいと思っていました。
小糸:私の場合、若手社員から研修受講の効果を聞かれる機会も多く、Scrum Inc.の研修内容を深く理解しておくことが重要でした。加えて、自信を持って支援ができるようになりたかったためです。そして、体系的にスクラムを理解することで、担当するアプリ開発プロジェクトにおいてスクラムを効果的に導入したいと考えていました。
──研修で得られた知識や経験を業務にどのように活かしたかを教えてください。
中島:スクラムマスター研修では、アジャイルとスクラムの違いを明確に言語化できたことが大きな学びでした。これまでは何となく理解していたつもりでしたが、研修を通じてその違いを具体的に説明できるようになりました。例えば、アジャイルは基本的な価値観や原則を示しており、スクラムはその実践方法の一つであるということを同僚がわかるように説明できるようになりました。
また、プロダクトオーナー研修では優先順位をつけることの重要性を再認識しました。アジャイルに取り組む前は、どのタスクも重要で同時並行で進めることが多かったのですが、研修の優先順位を決めるエクササイズでは、みんなの意見を丁寧に集め、これに基づきプロダクトオーナーが最終的な意思決定をする、そのプロセスがとても大事だということを学びました。研修で経験したことは実際の業務の中でもほぼ同じことをやっていると思います。プロダクトオーナーとしてのキャリアに向き合うきっかけになりました。
小糸:ある会社の受講者と共に演習を行うことで多くの学びを得ました。演習ではスクラムを活用してプロジェクトを進める過程を受講者のチームで体験し、気づきをディスカッションすることで理解をより深めることができました。また、アジャイルを組織に導入しようと挑戦している受講者と悩みを相談しあえる時間はとても貴重でした。受講者の積極性や意欲、姿勢から学ぶことも多く、良い刺激になりました。
オンライン形式の研修では各チームに一人ずつ、経験豊富なトレーナーがつきました。体験型でサポートが厚い研修スタイルは学びを深める上で非常に効果的でした。受講者の自主的な学びを尊重しながらも、受講者だけで解決できないものは、トレーナーからヒントを得ながら進めることができました。
特に印象的だったのは、スクラムマスターとしての真のリーダーとしての振る舞いを深く理解できたことです。スクラムマスターはチーム全員が自発的に関与し、決定を下せるように支援するサーバントリーダーシップの考え方を取ります。この振る舞いを理解して実際のプロジェクトでチームを支えることで、チームがより円滑に活動できたと思います。自分のありたいリーダーシップの姿に近づけたと思います。チームや組織をいかにサポートするか、これからも日々考えながら行動していきたいです。
──研修後にどのような変化がありましたか?
中島:チームメンバーから「中島さんがいるチームのプロダクトは利用者から好意的な反応が多い」と言われることが増えて自信に繋がっています。研修で学んだことを実践に取り入れた成果だと感じています。Scrum Inc.の認定資格を取ることで、まず小さな成功体験を得られたことが原動力になりました。
小糸:私自身というより、チームメンバーが受講した後に、マインドが変わったなと思うことが多いです。視座が上がり、目の前のタスクを完成させるだけの話ではなく、チーム全体の効率を高め、フロー効率を上げるためにどうしたら良いだろうといった改善の提案を積極的にするようになりました。受講者を送り出す側として、研修直後に、行動や態度が変化するのを実感しています。
──どんな人にこの研修を勧めたいですか?
中島:これからアジャイルやスクラムを始める人、興味がある人にはぜひ受けてほしいです。独学でスクラムを始めても良いですが、誤った理解のまま実践することになりがちです。実際、前職では我流でやっていたので、プロジェクトがうまく進まないと、マネジメントからはその原因はスクラムだという判断になってしまい、プロジェクトを解散させられた経験がありました。研修で正しい知識を知ることでスクラムの理解が深まり、プロジェクトの成功確率が高まります。例えば、私自身は正しいスクラムをやりたくてKDDIに転職しましたが、研修を受けたことで、自分のやり方に自信を持てるようになりました。我流でやっていた人と、これから始める人には強く勧めたいですね。
また、スクラムを実践してから受講すると、間違えていたところや、新たに取り入れるべきところに気づくことができるので、良い学びになります。具体的には、プロジェクトの初期段階での目標設定や、プロダクトバックログの優先順位付けの方法など、実際のプロジェクトで役立つスキルを学ぶことができました。
小糸:特にエクササイズが多く、実践的な内容が充実しているので、講義だけではなく、実際に手を動かして学びたい人にお勧めです。チームで学ぶことで、他社の課題や自分の課題について話し合いながら学ぶことができます。研修では、他社の参加者と一緒にディスカッションを行い、実際の現場で抱えている課題に対する解決策をチームで見つけることができました。
また、人事部門や広報部門などの開発以外の組織で変化に対応できる仕事をしたい人にもお勧めです。「仕事の優先順位付け」や「1つのことに集中する」考え方は、どんな業務にも活かせるので、開発以外の業務でも大いに役立ちます。例えば、営業部門のメンバーがスクラムの考え方を取り入れることで、チーム全体のパフォーマンスが向上しました。
──もし研修を受講していなかったら、どうなっていたと思いますか?
中島:失敗を続けていたかもしれません。外部からの圧力で従来の仕事のやり方に戻ってしまう可能性もありました。研修を通じて学んだ共通言語(例えば、ワーキングアグリーメントやスウォーミングなど)を持てたおかげで、チームがすぐに円滑にコミュニケーションできるようになりました。
小糸:私たちの会社では組織的な取り組みとして研修受講を推奨しているのですが、もし受講していなければ、アジャイル・スクラムの理解度が人によって異なり、チームの立ち上げに時間が掛かったり、齟齬によるスピードダウンが発生していたかもしれません。例えば、プロジェクトの途中でチーム内に混乱が生じた際、研修で学んだファシリテーションスキルを使って、問題を早期に解決することができました。
──最後に、受講を検討している人に向けて一言お願いします。
中島:この研修は資格の取得だけではなく、アジャイルに関する悩み事を解消できるチャンスです。受講される方の職場でスクラムを実践しているチームが少ない場合でも、孤独ではないと感じることができ、同じ境遇の人と話すことで新たな視点を得ることができます。例えば、私自身も研修を通じて多くの仲間を得ることができ、プロジェクトの進行がスムーズになりました。
小糸:同じような課題感を持っている人たちが集まって対話をしながら学ぶため、とても楽しく、満足度が高いです。Scrum Inc.の研修はトレーナーのレベル差が少なく、初心者の方も安心して受講できる内容です。初めてアジャイルに触れる方でも、トレーナーや仲間のサポートを受けながら学べるので、安心して取り組むことができます。