Sky株式会社様は、組み込みから業務システムまで、幅広い分野の開発を手がける独立系のSIerで、Scrum Inc. 研修を長く採用頂いています。
研修で学んで頂いたことをどのように仕事に活かしているのか?
Sky社内でのアジャイル・スクラムの教育を統括し、現場での活用を推進されているお二人にインタビューしました。
──SIJ 木代:まずは、Skyについて教えてください。
Sky 寺岡:Skyは独立系のSI会社です。
お陰様で、今年で41期目を迎えることができました。
Skyのビジネスですが、大きく2つの事業部から成り立っています。
これが会社の2本の柱です。
まずは、自社プロダクトを作る部門についてです。
今でこそ企業向けのサービスが多いですが、実は今まで、数多くのコンシューマ向けサービスにも取り組んできています。
PlayStation向けのゲーム(*1)も作ったり、現在ではすでに撤退していますが、豚まんを販売する飲食店(*2)をやっていたりしました。
たくさんのチャレンジと試行錯誤の中で、実になったものが、自社プロダクトとして残っています。
CMをしているのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、名刺管理のSKYPCE(*3)や、SKYSEA Client View(*4)などです。
SKYPCEは営業支援 名刺管理サービスです。
名刺は企業の社員ごとに持っている会社の秘められた資産で、これを個人ではなく組織全体で活用してビジネスを広げてほしい、という想いで作っています。
SKYSEA Client Viewは、ご存じの通り、情報漏洩対策やIT資産管理の効率化を実現するクライアント運用管理ソフトウェアですが、PCにインストールされていると、本当に仕事に集中できます、さぼれないですよ。
様々なものを試してみて、多くの試行錯誤を繰り返しながら、その中で効果的だったものに集中する。
そういうことを続けてきたのが、Skyのプロダクトビジネスです。
もう一方の、お客様のサービスをインテグレーションする部門は、お客様が作りたいものを作り上げる手助けをする、いわゆるSIの仕事です。
組み込みハードウェアから車載システム、CSの負荷を軽減するチャットボットや、契約情報を管理するような業務システムなど、お客様のニーズに合わせ、幅広い分野でお客様のプロダクト開発を担っています。
──SIJ 木代:お話しを聞いていると、Skyさんは昔からアジャイルのマインドが備わっていて、試行錯誤しながら進めて来られたんだな、と感じました。
そのような御社の社風は、どのような感じなのでしょうか?
Sky 伊藤:まず最初に、会社と社員全員がタイムボックスを意識して働いています。
SKYSEA Client Viewもそうなのですが、勤務時間中は業務に集中して仕事を片付けてもらい、定時になったらしっかりと終業して休む。
こうした働き方をしよう、という意識が定着しています。
そういった点で、自分達が言うのもなんですが、非常にホワイトな企業だと思っています。
──SIJ 木代:実際に研修をしていても、受講者のみなさんから「時間内に課題を終わらせてアウトプットを出そう」という強い意識を感じます。
Sky 伊藤:あと、貪欲にお客様の価値を追求することも浸透していると思います。
お客様がより良いプロダクトを完成させ、それで成功する、売り上げを上げれば、自分たちのビジネスも広がる。
これは経営層から現場まで、浸透している考え方です。
現場営業、というのでしょうか?チームに入っている開発者も、何をすれば顧客の価値が上がるのかを考えられる人が多いです。
現場から、お客様にこうしましょう、と提案できるのが強みだと思います。
また、速さも意識しています。
例えば、お客様が構築しているシステムの中で、新しい機能モジュール・サブシステムを作る必要があったとき、すぐにそれに着手できるチームを提案できる体制を作っています。
競合よりいかに早く検討し、提案するかを現場からマネージメントまでが常に意識している。
もちろん、大きな判断では会社の上層部の決裁を得ますが、たいていのことは現場の裁量でできるように権限移譲されています。
──SIJ 木代:以前、開発でSkyの方がいる現場に入ったことがあるのですが、確かに色々提案頂いた記憶があります。
「このように作っておくと、後々拡張やメンテナンスがしやすいのではないか」のような感じでお話しいただきました。
──SIJ 木代:ところで、ソフトウェア開発において、本格的にアジャイルに取り組むきっかけは何だったのですか?
Sky 伊藤:SIの分野で、あるお客様が、アジャイル開発をやりたいので手伝ってもらえないか、というお話を頂いたのがきっかけです。
こういうものを作りたい、という話ではなく、作り方をこうしたい、というご相談でした。
我々も書籍などで学んではいたのですが、お客様のニーズを深く知るために、アジャイルを急ぎ理解し身につける必要がありました。
ですので、まずは、担当部署でアジャイルを推進する小さなWGを作り、社内の人材育成の部門に協力をお願いし、外部のアジャイル研修を受講し知識をつけるところから始めました。
初回の研修の参加メンバーは、現場でお客様と接している担当者を中心に選抜しました。
──SIJ 木代:たくさんのアジャイル・スクラムの研修を提供する会社がある中で、Scrum Inc. Japanの研修を選んでいただいた理由は何だったのですか?
Sky 伊藤:Scrum Inc. Japanに研修を依頼しているのはいくつか理由があるのですが、まずはタイムボックスを意識した進め方になっている点です。
個別のエクササイズにはしっかりタイムボックスがあって、その中で議論し尽くし答えを出す。
こういう進め方が、Skyの社風に合っていると思います。
あともう一つは、オンライン研修で各チームについてくれるトレーナーです。
コロナ禍の研修はすべてオンラインでお願いしていましたが、Scrum Inc. Japanの研修はオンラインにもかかわらず社内の評判が高いです。
各チームにトレーナーがいて、ちょっとした疑問をすぐに聞いて解決できたりするのは、非常にありがたいです。
Sky社内では、すでに200名が研修に参加し、Registered Scrum Master(RSM)を取得しています。
──SIJ 齋藤:研修を受けてみて、どんな変化がありましたか?
Sky 寺岡:これは開発手法ではなく、問題に対するアプローチの違いだな、と思いました。
初めに決めたことをすべて実施するアプローチではなく、顧客にとって価値があるものに集中し、そうでないものは優先度を下げたり、あきらめたりする進め方なんだな、と。
また、プロジェクト、プロダクトによって向き不向きがあるとも感じました。
受講した多くの人が感じたと思います。
一方、アジャイルをしたい、というお客様の一部の人たちが、アジャイルと言いつつも従来の考え方から抜け出せていないということにも気づきました。
例えば、我々の参加する開発では、多くのケースでお客様がプロダクトオーナーになるのですが、どうしても固定されたリリース日があり、そこから逆算してリリース計画を立ててしまうことが多いです。
そのような状態では、スコープ(要件)が全て固定化され、エンドユーザやステークホルダーからフィードバックをもらいながらスコープを調整するような進め方ができず、結果アジャイルの本質的な狙いが果たせない。
ですので、現在ではそのようにならないよう、可能な限りSkyからお客様であるプロダクトオーナーにアドバイスさせて頂いています。
また、研修の学びをもとに、実際の現場との知見を合わせ、こういったケースでは具体的にどうすれば良いのかをまとめたガイドライン、チェックリストも作成しています。
このチェックリストをもとに、アジャイル推進役として、これからアジャイルを始めるチームや、顧客に提案しようとするチームにアドバイスしたり、支援したりしています。
初めは1部門を対象とし、少人数体制だった、このアジャイル推進のワーキング活動も、現在では全社横断の取り組みになっています。
──SIJ 齋藤:実際の業務の中で、成果に結びついたエピソードがあれば教えてください。
Sky 寺岡:多くのお客様と相対する中で感じることなのですが、お客様の多くがアジャイル、スクラムのプロセスだけに注目して、スクラムのイベントを形だけで回されている。
何故そうするのか、というところまで深堀されていないケースがあります。
こういった場面では、先ほどのガイドラインやチェックリストを元に、そのイベントの意義(Why)や、必要なアウトプットは何なのかなどをお客様に説明し、理解していただく取り組みをしています。
また、プロダクトオーナーと言いつつも、既存のウォーターフォールの思考から抜け切れていないお客様に対しては、アジャイルのマインドや、価値の高いものに集中しながら不要なものは作らない、という考え方に切り替えていただくご支援も始めています。
まだ案件数は少ないのですが、プロダクトオーナーを支援するという役割でチームに入らせていただけるケースも出てきています。
──SIJ 木代:御社の中では、研修に参加いただく方はどのように決められているのでしょうか?
Sky 伊藤:漫然と受けることがないよう、受講希望者に一筆書いてもらい、それを元に判断しています。
研修が自分の業務にどのように活かせるのか、希望者が書いたものを確認し、その内容を元に判断しています。
ただ「資格を取りたい」だけでは困りますので。
希望者が多いため、お断りすることも少なくないです。
また、最近では、現場だけでなく、マネジメントレベルの受講希望者も受け入れています。
マネジメントレベルの人たちは、自分たちが直接作業するわけではないですが、現場がどのようなことをして、お客様に価値を届けようとしているのか、そのプロセスを知ることには価値があるし、良い効果をもたらすと考えています。
──SIJ 木代:Sky様では今後、アジャイルをどのような分野で活かしていきたいですか?
Sky 伊藤:まず、お客様のプロダクトオーナーを支援していく案件は、引き続き増やしていきたいです。
従来型の思考から抜け出せないプロダクトオーナーをSkyのメンバーがコーチするような顧客支援です。
これらの仕事には、スクラムのプロダクトオーナーの思考力が必要になりますが、プロダクトオーナーの仕事を理解できる人を増やさないといけないと思います。
Skyでは、Scrum Inc. Japanのプロダクトオーナー研修をやっていただいた回数は少ないのですが、定期的に開催し、このようなビジネスを推進できる人を増やしていければと思います。
Sky 寺岡:また、Skyでは昨年度、お客様の課題を解決するために、オールインワンでSIを提供しようという部門を立ち上げています。
パッケージソフトだけを売るのではなく、また、お客様が「これをしたい」と決めたものをただ作るだけでなく、お客様と普段から接している営業を起点に、どのようなことができればお客様の価値につながるのかを一緒に考え、試行錯誤しながら進めていく。
こういった仕事の中でアジャイルを活かせるのではないかと考えています。
──SIJ 木代・齋藤:本日はありがとうございました。
*1,*2 https://www.skygroup.jp/company/history/
*3 https://www.skypce.net/
*4 https://www.skyseaclientview.net/