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アジャイルツアー・クアラルンプール2024 レポート

2024.10.16

Scrum Inc. Japanでアジャイルコーチをしているクロエ・オニールです。

10月4日にマレーシアで開催されたアジャイルツアー・クアラルンプール(ATKL)というカンファレンスに登壇しました。クアラルンプールの熱気に包まれながら、建設業界でのスクラムの先駆者であり、Scrum Inc.のトレーナーでもあるフェリペ・エンジニアと一緒にMCを務めるという、貴重な体験をさせていただきました。東南アジア各国、シンガポールやインドネシア、タイなどから集まった300人以上の参加者とともに盛り上がり、アジャイルの力が国境を越えて拡がっているのを実感しました。

注目のポイントと学び

オープニングキーノートでは、Scrum Inc. CEOのJJサザーランドが登壇し、英国海軍でスクラムを活用した変革の取り組みについて語りました。彼は、政府機関における大きな課題として、多くの公務員が「国民のために現状を良くしたい」という熱意を持って公務に就くものの、官僚主義がそれを阻む要因になっていることを強調しました。スクラムの導入により、不要な障害や官僚的なプロセスが排除されることで、チームが本来の使命である「公共への貢献」に専念できる環境が整うと説明しました。彼のメッセージは、多くの参加者に響き、特に大規模な組織改革に携わる人々にとって強い共感を得たのではないでしょうか。

ATKLでは、「ピープル(人)」「プロダクト(製品)」「プロセス」の3つのトラックがあり、各分野でスピーカーが独自の視点からアジャイルの経験を語りました。全体のトレンドとしては、特定のアジャイルフレームワークに固執せず、むしろその原則を理解して実務に適応させようとする意識が強まっていると感じました。どのスピーカーも、仕事の流れを改善し、顧客と従業員の満足度を高めるために、スクラム、Scrum@Scale、リーン思考、デザイン思考、SAFe(Scaled Agile)などあらゆるメソッドを活用しています。この日はオープンスペーステクノロジー(OST)のセッションで締めくくられ、参加者が事前に決められたテーマについて自由にディスカッションに参加できる場もあり、知識と経験の共有がさらに深まりました。

私のセッション: アジャイルの広がり

私のセッションでは、日本コカ・コーラのチームとの経験を通じて、アジャイルがITの枠を超えて多岐にわたる業界に広がり、変革をもたらしていることを強調しました。アジャイルとスクラムは、消費財を含むあらゆる複雑なプロジェクトに応用でき、チームにプロダクト価値・チームのハピネス・開発スピードを全体的に見直す力を与えます。スクラムの原則は、業界に関係なく革新をもたらす可能性があり、実際に多くのチームが効率と創造性を大幅に向上させています。

ネットワーキングとつながり

私は、普段はあまり接点のない、特に航空業界と銀行業界のプロフェッショナルの方々と会う機会があり、アジャイルが幅広い分野で活用されているのを改めて感じました。そこではScrum Inc.のSAAB Aerodynamicsとの経験について話したり、テスラのギガファクトリーについて意見交換し盛り上がりました。さらに、翌日たまたまクアラルンプールで開催されていたETHKL(イーサリアムのサミット)にも招待され、ブロックチェーンや技術分野の活気に直接触れることができました。イベントのテーマ「Building Decentralized Harmony」(分散型の調和を築く)には個人的に大いに共感するテーマで、未来への可能性を感じずにはいられませんでした。参加者や登壇者も主に10代後半から30代が中心で、次世代のリーダーたちが意欲的に未来を語り合っている姿が印象的でした。私が参加したアジャイルな考え方を取り入れたワークショップのコンテンツも非常に興味深く盛り上がり、日本にぜひ持ってきたいと思ったので、乞うご期待を!☺️

文化に関する洞察と気づき

コロナ禍を経て、マレーシアが保守的な方向にシフトていると多くの人が言っていたのはびっくりでした。私がイベントにタンクトップで出席したことは失礼にあたり、すぐにカーディガンを羽織らなければなりませんでした(^_^;)。今思えばアメリカのスタートアップで働き始めた頃、スーツで面接に来る人は「カルチャーフィットじゃない」と見なされるほどカジュアルな雰囲気だったことを思い出します。それに比べると、東南アジアの職場はまだまだフォーマルです。(日本も?w)

服装や場の雰囲気の違いだけでなく、マレーシアの労働市場もダイナミックに変化しています。現在、マレーシアの労働力人口は約1,640万人で、失業率は3.3%と低く、パンデミック後の安定性を示す兆しが見られます。契約やプロジェクトベースの仕事が増え、柔軟な働き方も普及しつつあります。2025年までには、労働力の70%以上をミレニアル世代とZ世代が占め、デジタルイノベーション、職場の柔軟性、社会的責任を重視する傾向が強まると言われています。また、ETHKLでは殆どの参加者がデジタルノマドで、最新の働き方は特定の場所に固定しないことだと改めて感じました。

最後に

グローバルなアジャイルの流れとして、特定のフレームワークへのこだわりを捨て、原則を活かしてチームの成長とフローの最適化を図ることが重視されるように見られます。そんな様々なトレンドが生まれる中、私はやはりスクラムが大好きです。スクラムは「軽量だが不完全」シンプルながらも柔軟性があり、経験を通じて進化していけるのが強みです。近いうちにまた東南アジアに戻れることを期待しています。

クロエ(Chloe O’Neil):エンジニアとして10年以上の経験を積んだ後、Scrum Inc. Japanの創設に携わり、現在はアジャイルコーチとして組織の生命力を牽引しながら活動中。アジャイルの普及に尽力し、日本における新しい働き方の可能性を広げる役割を担っている。米国マサチューセッツ州ボストン出身で、日本人と米国人の両親のもとに生まれ、日米両国での生活と経験から自然に培った柔軟性とバイリンガルスキルが強み。多文化背景を活かし、Scrum Inc. Japanへの貢献を続けている。個人のウェルビーイングとチームワークを最優先に、地球上の誰もがより豊かに働き、生きられる未来の実現に情熱を注いでいる。