John Deere導入事例

1835年創業、農耕機械世界最大手John Deereの大成功したアジャイル変革

2019年、John DeereのグローバルITグループは、「成果(アウトカム)を得るスピードを高める」というシンプルかつ野心的な目標を掲げ、アジャイル変革に着手した。

多くのFortune 100企業と同様、John DeereのグローバルITグループは既にアジャイルのフレームワークを組織の一部に導入していたが、経営陣が望んだ結果を達成できていなかった。

そこで、John DeereのグローバルITグループのシニアリーダーは、グループの業務のあらゆる側面に関わる包括的なトランスフォーメーションに着手することを決定した。

当時をふりかえり、同社でグローバルIT担当役員を務めるGanesh Jayaram氏は、「私たちリーダーは、組織変革のフレームワークとして、Scrum@Scaleが、ITおよび組織全体へアジャイルを浸透させるのに最も適していると判断しました。」と語る。リーダーシップの決定により、DevOpsと技術的なスキルアップとともに、スクラムとScrum@Scaleがグループの新しいアジャイル組織運営の中核となった。

そして、John Deereは、スクラムのトレーニングとアジャイル変革のコンサルティングの両方における長年の実績を評価し、Scrum Inc.を変革のパートナーに選んだ。

開始から2年目にして、John Deereの変革は大きな実を結ぶ。

変革の中心「Foundry」

John Deereの変革の中心となったのが、同社のアジャイル実践道場「Foundry」だ。「Foundry」は、アジャイルチームの立ち上げと育成に必要なトレーニングとコーチングに関するあらゆる知識、スキル、ノウハウ、コンテンツ、戦術を保有する。

「Foundry」は、John Deereの社内トレーナー・コーチとペアを組むScrum Inc.のコンサルタントからなる専任チームによって立ち上げられた。

「Foundry」モデルは非常に成功し、John DeereのグローバルITグループは、アジャイル変革をアメリカから開始してメキシコ、ドイツ、ブラジルへ拡大。そして、インドの同社の専用の施設における本格的な「Foundry」プログラムへと結実した。

ウェーブ/フェーズアプローチで大規模なアジャイル変革を推進

大規模なアジャイル変革では、チームの効率的なトレーニングとコーチングの提供が重要となる。「Foundry」がScrum Inc.とともに開発したウェーブ/フェーズアプローチでは、通常40~50チームで構成されるトレーニング集団が1つのウェーブを構成する。そして、それぞれのウェーブに参加するチームが、以下の3つのフェーズを経て、自立したスクラムチームとなる。
事前
フェーズ
「Foundry」のコーチは、スクラムの導入対象となるプロダクトの関係者とともに以下を受け入れ条件とする準備活動を行う。
  • チームがスクラムおよびScrum@Scaleを実践するためのプロダクト構造と組織デザインの見直し
  • プロダクトオーナーとスクラムマスターの役割を満たす候補者の選定
  • 準備
    フェーズ
    プロダクトオーナーは、週に一度、ワークショップに参加し、2ヶ月かけて、カスタマージャーニーマップの作成方法から、顧客インタビューの実施方法まで、効果的なフィードバックループを実現する方法を学ぶ。また、プロダクトオーナーとして重要な、バックログの管理方法と優先順位付けの方法、プロダクトゴールの立案やリリースプランニングの方法も学ぶ。
    集中
    フェーズ
    最初の1週間で、Scrum Inc.認定スクラムマスターおよびプロダクトトレーニング、およびチーム立ち上げ・プロダクトバックログワークショップを行う。チームのワーキングアグリーメント、プロダクトビジョン・プロダクトゴール、そして、直近1〜3スプリント分の準備完了のバックログが用意できたら、スプリントが開始される。

    チームは、以降9週間、伴走型コーチの支援を受けながら、顧客価値とプロダクトのデリバリーに完全に集中する。

    3つのフェーズはすべて同時に実行されるように設計され、フェーズごとに担当するトレーナーやコーチも異なる。それにより、大規模かつ効率的なチームの立ち上げが行えるようになる。

    2019年末のアジャイル変革の開始から約24か月後の2021年12月時点までに、John Deereは以下のトレーニング成果を達成した。

  • 295チーム、2,500人がトレーニングのすべてのウェーブを完了
  • 50チームがウェーブに参加中
  • 150チームがウェーブへの参加待ち
  • アジャイル変革の成果

    2019年末に始まったJohn Deereのアジャイル変革は、2年が経過した2021年12月末時点までに大きな成果をあげた。John Deereでは、グローバルITグループのアジャイル変革の投資利益率(ROI)が100%を超えると推定している。

    主な企業レベルの成果は以下の通り。

  • 生産性: 当初の目標であった125%を上回る165%増を達成。
  • 市場投入までの時間: 当初は40%短縮を目指していたが、63%短縮を達成。
  • ソフトウェアエンジニア比率: エンジニアリングを通じて価値を提供する目標として、ITグループにおける「ソフトウェアエンジニア比率」を75%に設定。目標を上回る77.7%を達成。
  • コスト効率: 内製化と戦略的な採用により、スクラムマスターやアジャイルコーチなどの新たな役割が増えたにも関わらず、目標の人件費20%削減を達成。
  • 従業員NPS(eNPS): 従業員ネットプロモータースコア(eNPS)は、チームの健全性を表す。John Deereでは50ポイント以上が優秀とされる。当初の目標であった62ポイントを上回る65ポイントを達成。
  • John DeereにおけるスクラムおよびScrum@Scaleの今後

    2021年、John DeereのグローバルITグループは、世界最大規模のScrum@Scaleの導入組織となった。

    アジャイル変革は、IT領域を超えて広がりつつある。同社のアジャイルコーチの1人が、工場の現場に行って、ある工場チームと一緒に仕事をした結果、チームはとてつもない成功を収めた。

    グローバルIT担当役員のGanesh Jayaram氏は、工場の事例を「アジャイルが全社的に浸透している事実」の兆しと見みし、新製品のR&D、製造、人事を、スクラムおよびScrum@Scaleが次に有益な結果をもたらす領域と考えている。

    John Deereは企業として、より高いパーパス「WE RUN SO LIFE CAN LEAP FORWARD(私たちが走るから、人生が飛躍する)」を掲げる。同社のグローバルITグループは、今後数十年に渡り、スクラムおよびScrum@Scaleを組織全体へと広げながら、同社のパーパスの実現を力強く推進していくだろう。

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